リレーの話

書いた人:とむ

リレー

近づいてきたら、ゆっくりと出て、右手でもらって左手に持ち替える。最後は一番速い人。

これはリレーの当り前である。

時は2008年、北京五輪の4継(400メートルリレー)で日本代表は銅メダルに輝いた。
『なぜ、日本で一番早い末續慎吾が2走なのだろうか?』そもそも最後が一番速い人でなくてもよいはずだ。

エース対決で盛り上がるからという理由ならば、観衆のために過ぎないのではないか?
調べてみるとリレーのバトンゾーンは20メートル、自分が走る100メートルに加えて前の走者のエリアに10メートル、後の走者のエリアに10メートルある。

つまり、手前でもらって奥で渡せば、理論上2走と3走においては最大120メートルを使うことができる。

しかも2走はアンカー同様に直線を走ることができるので、エースが起用されることが多い。

受け取ったバトンは持ち替えず、1走は右手、2走は左手と交互に渡っていく。それにより、持ち変えることによるタイムロスやバトンを落とすリスクも無くなる。

なるほど、思った以上に深い世界だ。

ベストセラーの一瞬の風になれを読むと飛び出しのタイミングは前の走者の走力やその日の調子によって半足刻みで調整していた。ますます深い。

陸上部の息子の応援に行くと、スタートの合図の直前にレーンに飛び出しのタイミングの目印テープを貼っていた。掌にはマジックでバトンを叩きつける的となる大きな〇を書いている。出走前に大きく手を振りながら、お互いの名前を大声で呼び合う姿に感動を覚えた。

息子は10秒台で走るが、前半タイプなのでバトンパスが重要なリレーには不向きであったため、残念ながら名門高校の4人の枠に入ることは叶わなかった。

歴史上100メートルを9秒台で走った日本人はいない。

しかし、4継の日本記録は38秒03(9.5秒/1人)である。

お互いがスピードに乗った状態で受け渡しがなされることで4人の持ちタイムから何秒も縮めている。さらに日本チームはアンダーハンドパスを採用している。渡し手と受け手が接近するため接触などのリスクがある反面、本来の走りに近い形で受け手に渡るため、タイムロスが少ない。

1975年40秒22だった日本記録は30年以上の月日が流れて2007年には38秒03まで向上している。スパイクやトラックの改善はもちろんだが、バトン技術の向上によるところも大きい。現在の日本代表は4人の中で走力が劣る選手が起用されるとされる3走に桐生選手が起用されていた。よっぽどコーナーリングが上手いのか、ここで一気に差をつける作戦なのか興味深い。

100分の1秒のために日夜バトン練習を繰り返している。東京オリンピックではその1/100秒を削り出し、日本代表4継チームのメダル獲得を願って止まない。