加齢とともに避けられない白内障、その治療法を眼科専門医に訊く

書いた人:EYEdea編集部

この記事は眼科専門医が教える。知っておきたい紫外線とアイケアの実情を再編集し、掲載しています。

50代から発症が始まり、75歳以上では2人に1人は手術が必要といわれている白内障。医療の発達に伴い、現在では“治る病気”として手術治療がポピュラーになりつつあります。

白内障とは一体どのような症状が起こるのか、またどのような治療が行われているのでしょうか。坪井眼科医院の院長・坪井 隆先生に、眼科専門医から見る白内障の実情についてお話を伺いました。

白内障と老眼、同じ加齢現象でも似て非なるもの

――白内障はどういった病気なのでしょうか?

坪井先生 白内障にはいくつか種類があります。老化による代謝の低下を原因とする老人性白内障をはじめ、糖尿病性白内障などの病気を起因として発症するもの、かなり特殊ではありますがアトピーなどアレルギーによるものも存在します。

一般的には老化によるものが多く、目の中にある水晶体が濁ってくることで、視力が低下する、視界が霞む、色がついて見える、光を眩しく感じるというような症状が主にあります。ただし、症状の進行スピードはかなりゆっくりとしたものなので、初期の段階ではほとんど気づかず、徐々に自覚し始めることが多いです。いずれにしても、加齢とともに誰にでも起こりうる現象ということは、間違いありません。

――白内障と老眼との違いは?

坪井先生 白内障と老眼はまったく別ものです。老眼とは加齢によって水晶体が硬くなってくることで、ピント調整する機能が衰えてしまい、近距離から中距離のものが見え辛くなるもの。このピント調整を助けるのが老眼鏡ですが、最近ではパソコンやスマートフォンの普及で目を酷使していることもあり、老眼が始まるのが35歳位と若年化が進んでいます。

一方の老人性白内障は、個人差はありますがだいたい50歳あたりから始まり、水晶体が濁ってしまうことで見え辛くなるという違いがあります。

眼科ではどちらも検眼と視診によって判断しますが、白内障であれば水晶体の中の核が白く濁って見えますし、老眼が進んだ水晶体は、硬化によって委縮し、萎んだ風船のように薄くなっています。

身近だからこそ知っておきたい、白内障手術

――白内障の治療方法とは?

坪井先生 現在の治療方法は、手術か点眼薬が大半です。点眼薬というのは水晶体の濁りの進行を防ぐ、遅らせるというあくまでも保存的な治療で、症状が改善することはありませんが、進行が少なければ点眼を続けるということもあります。しかし、根本的な治療という意味では、手術以外に改善手段はないのが現状です。

白内障の手術は医療機器の発達によって、以前と比べてもかなり手軽に行われています。水晶体の中から濁った核を除去し、人工水晶体を入れるという手術が一般的で、日帰りでできるということもあり、最近では患者さんの方から手術を希望される方も増えてきました。

とはいえ、手術には変わりないので年配の方などは躊躇される方もいらっしゃいますし、患者さん自身のライフスタイルに応じて、必要性が異なってくるものだと思います。デスクワークをされている方などは、視力の低下は大変ストレスに感じるでしょうし、手術で改善できるのであれば治したいと考えるのは当然だと思います。

――手術後、気を付けなければいけないこととは?

坪井先生 手術後は、細菌感染に気をつけながら、人工水晶体の度数が自分の調節力にフィッティングできるかを観察していきます。ただし、手術後に白内障の症状は改善されても、老眼による視力低下は改善されません。特に、この間は視力が不安定で、昨日合っていたものが今日は合わないということが起こります。その後2~3か月すると、度数が固定してきますので、その時点で老眼鏡を作るといいと思います。

この時も、日にちをおきながら何度か検眼をして、差異がないか確認してから選ぶことが大切ですが、あとは普段のメガネ選びと変わりません。また、術後に眩しさを感じる人も時折いますので、その際は偏光や遮光のレンズを使用したメガネもおすすめです。

まとめ

白内障や老眼は加齢によって誰にでも起こりうる現象。また、白内障の手術後は視力の変化に合わせた、こまめなレンズ度数の調整が肝心です。正しい知識を身につけて、最善の対処をしていきたいですね。

取材協力・監修:坪井 隆 氏

坪井眼科医院 院長。
1948年生まれ。1971年に東京医科大学を卒業後、広島大学眼科学教室に入局。1980年、広島市に坪井眼科医院を開院。1994年に全国初となる「眼精疲労治療室」を設立し、現在では全国18か所にて展開。テレビ、雑誌をはじめ、様々なメディアで話題に。
主な著書は『眼精疲労を防ぐ 眼鏡・コンタクトレンズの選び方』(幻冬舎)、『眼の疲れをとる本――眼精疲労を防ぐ・治す』(講談社、2002年)ほか。

取材・文:佐藤由実
編集:EYEdea編集部

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