紫外線と眼の健康への影響について、眼科専門医の先生へ訊いてみた

書いた人:EYEdea編集部

意外と知られていない紫外線の目に対する影響とそのケア方法について、眼科専門医として様々なメディアで活躍する、坪井眼科医院の院長・坪井 隆先生にお話を聞いてみました。

この記事は眼科専門医が教える。知っておきたい紫外線とアイケアの実情を再編集し、掲載しています。

サングラスの女性

「オゾン層の破壊」や「有害紫外線の影響」といった話題が飛び交い、UVケア商品の人気が高まっている昨今。実は、肌以上に紫外線の刺激に弱いのは“目”だってご存じでしたか?

意外と知られていない紫外線の目に対する影響とそのケア方法について、眼科専門医として様々なメディアで活躍する、坪井眼科医院の院長・坪井 隆先生にお話を聞いてみました。

現代人は紫外線に対して、抵抗力が弱くなっている!?

――紫外線の影響で、目に病気や症状が発生することはありますか?

坪井先生 長時間、強い紫外線を受けることによって、結膜炎が起こりやすくなり、時には白内障になる危険性ないとは言えません。これまでのケースでは、雪山に行って目が痛くなるという、いわゆる結膜炎の患者さんはよく診ることがあります。

これは光線角膜炎といって、紫外線によって眼の表面にある角膜が少し炎症を起こし、血管のある白目の部分が真っ赤になる症状です。しかし、中には結膜よりもっと中に入って炎症をする、虹彩炎という症例もあります。

――どのようなメカニズムで紫外線は目を刺激するのでしょうか?

坪井先生 通常は角膜を覆っている涙液が紫外線をブロックし、角膜に直接刺激を与えないように働いています。しかし、長時間、物を見ていたりすると涙の分泌が少なくなり、目の表面にある液層が壊れた状態で紫外線が入ってくると、角膜上皮が傷みやすくなるのです。

明治や江戸の時代に紫外線をカットするようなメガネはありませんでしたが、元々人間が持っている紫外線を防ぐ力のおかげで、大きな病気を引き起こすことはあまりありませんでした。現代でも紫外線そのものは、免疫力を高め、カラダの健康維持には欠かせない存在ですが、アイケアという観点では良い影響があるとは言えません。

――現代人は目の抵抗力が弱っているということでしょうか?

坪井先生 わたし個人の考えでは、特に最近の子どもたちは目や肌などの抵抗力が弱いように思います。昔に比べて今の子どもたちは家の中で遊ぶことが多く、太陽光を浴びる機会が少ないため、紫外線や赤外線をはじめ、外の刺激に対して免疫力が低下しているといわれています。アトピーや花粉症、ホルモンのバランスを崩しやすくなるなどの症例の多さは、子どもたちの抵抗力が落ちてきている証です。

また、子どもに限らず大人たちの間でも同様の傾向があり、一時前まで生活習慣病などが注目されていましたが、最近ではアレルギーや眼精疲労などの症状が多くみられます。長年、医療の現場に携わっていると、時代や環境によって人間の体質が変わり、近年、特に抵抗力が低下していることを痛切に感じています。

“眩しさ=紫外線”は勘違い! 紫外線は見えない恐怖

――紫外線から目を守るには、どのような方法がありますか?

坪井先生 一般的にはサングラスをかける方が多いと思いますが、この時大切なのは紫外線をカットするレンズかどうかということです。そもそも紫外線というのは肉眼では見えず、結果的に皮膚が日焼けしたりすることで分かりますが、人間の五感では捉えようのないもの。いわゆる“眩しさ”というのは可視光線のことで、サングラスは可視光線をカットすることはできますが、紫外線を防いでいるかというのは別問題なのです。

また、レンズの色が濃いほど視界が暗くなり瞳孔が開いた状態になるため、紫外線を通してしまうと網膜に直接届いてしまい、炎症を起こし結膜炎や黄斑変性を引き起こす可能性が高いのです。“眩しさ=紫外線”と勘違いしている方も多く、サングラスはもちろん、メガネを選ぶ際にも、“紫外線カット”の機能に注目してください。

さらに、目の健康には食生活も影響しており、ブロッコリーやほうれん草などの緑黄色野菜に多く含まれる、ルテインという栄養素を摂ることもおすすめです。強い抗酸化作用で目の機能や疾患に効果的として、いま話題の栄養素です。

まとめ

時代の変化とともに私たち人間の体質も変わりつつあるいま、目の健康維持への関心が高まっています。 サングラスやメガネはファッションとしてだけでなく、紫外線から目を守るためのアイケア・ツールとして活用していきたいですね。

取材協力・監修:坪井 隆 氏

坪井眼科医院 院長。
1948年生まれ。1971年に東京医科大学を卒業後、広島大学眼科学教室に入局。1980年、広島市に坪井眼科医院を開院。1994年に全国初となる「眼精疲労治療室」を設立し、現在では全国18か所にて展開。テレビ、雑誌をはじめ、様々なメディアで話題に。
主な著書は『眼精疲労を防ぐ 眼鏡・コンタクトレンズの選び方』(幻冬舎)、『眼の疲れをとる本――眼精疲労を防ぐ・治す』(講談社、2002年)ほか。

取材・文:佐藤由実
編集:EYEdea編集部